
水素は、健康や美容の分野で「体にいい」と言われることがあります。では、なぜそう言われるのでしょうか。
カギになるのは、体の中で起きている「酸化」です。酸化は、体の老化の原因のひとつと考えられていて、鉄が錆びるのに似ていることから「体の錆び」とも呼ばれます。水素は、この酸化との関わりから、健康や美容の分野で研究が進んでいます。
この記事では、まず体の中の「錆び」の仕組みを説明します。そのうえで、水素の研究がどこまで進んでいるかを、科学で確かめられていることとまだ研究途中のことに分けて整理しました。
この記事の前提
水素の効き目を保証する記事ではありません。水素は、病気の治療の代わりになるものではありません。治療中の方は、始める前に主治医に相談し、その判断に従ってください。
体の中で起きている「錆び」とは
鉄が錆びるのと、よく似たことが体の中でも起きている
鉄のくぎを外に置いておくと、赤茶色に錆びてきます。これは、鉄が空気中の酸素と結びついて、別のものに変わってしまうからです。理科ではこれを「酸化」と呼びます。
私たちの体も、酸素がなければ生きられません。食べたものを、吸いこんだ酸素で燃やして、体を動かす力をつくっています。そのとき、酸素の一部が、ほかのものと結びつきやすい「錆びのもと」に変わります。これが、専門的には「活性酸素」と呼ばれるものです※。
錆びのもとは、悪者ばかりではない
錆びのもとには、大切な役目もあります。体に入ってきた菌を退治したり、血管をゆるめて血の流れを保ったり、細胞どうしの合図に使われたりしています。
問題になるのは、錆びのもとが増えすぎたときです。増えすぎると、細胞を包む膜の脂や、細胞の中のたんぱく質、体の設計図であるDNAまで錆びさせてしまうことがあります。
体には「錆び止め」がもともと備わっている
体には、錆びのもとを片づける「錆び止め」の仕組みが、もともと備わっています。ふだんは、錆びのもとと錆び止めがつり合っています。このつり合いがくずれて、錆びのもとが多くなりすぎた状態を「酸化ストレス」と呼びます。

錆びのもとが増える原因としては、紫外線、たばこ、大気汚染などが知られています。
※「錆びる」は、体の中で起きていることをわかりやすく伝えるためのたとえです。実際に体が金属のように錆びるわけではありません。
水素は「錆び」とどう関わると考えられているの?
研究からわかってきていることを、順番に並べると次のようになります。
- 体の中に入る:吸ったり口にしたりした水素の一部は、血液に入ると考えられています。
- 細胞の実験で、一部の活性酸素と反応した:2007年、日本の研究グループが細胞を使って実験しました。水素が、特に傷める力の強い活性酸素を選んで減らしたと報告しています。
- 役目のある活性酸素とは、ほとんど反応しなかった:同じ実験では、ほかの活性酸素とはほとんど反応しなかったと報告されています。こちらは、体の中で大切な役目を持つ活性酸素です。
- 反応すると、水ができる:化学では、水素と活性酸素が反応すると、水ができます。
- 残った水素は外へ出ていくと考えられている:使われなかった水素の多くは、息と一緒に出ていくと考えられています。
ただし、これらは主に細胞や動物の実験からわかってきたことです。とった水素が人の体の中で同じように働くのか、その効き目は、まだ十分に確かめられていません。その後、別の考え方も出てきました。水素は、体がもともと持っている「錆び止め」の仕組みにも関わっているのではないか、という考え方です。
肌・血液・血管・内臓では、どんな研究があるの?
錆びは、体のいろいろな場所で起きています。部位ごとに、酸化についてわかっていることと、水素について行われている研究を並べました。水素の研究は、細胞や動物の実験か、少ない人数を短い期間調べたものです。どれも、効き目が確かめられたわけではありません。
酸化についてわかっていること長い年月、紫外線を浴び続けると、肌のハリを支えるコラーゲンが減り、しわやたるみ、しみが目立ちやすくなります(光老化)。紫外線を浴びると、肌の細胞の中で活性酸素が増えることも、細胞の実験でわかっています。
水素の研究2012年、日本の研究グループが、紫外線を当てた肌の細胞に、水素を多く含むお湯を加える実験をしました。その結果、コラーゲンが多くつくられ、活性酸素が減ったと報告しています※。
※主な結果は、細胞での実験です。同じ論文には、6人がこのお湯に3か月入浴した試験もありますが、人数がとても少なく、比べる組もないため、効き目を判断できる研究ではありません。水素を飲んだり吸ったりして、人の肌が変わるかは確かめられていません。
酸化についてわかっていること血液には、体を守る白血球などの細胞が流れています。体の中で活性酸素が増えすぎた状態が続くと、こうした細胞にも負担がかかると考えられています。
水素の研究2020年、韓国の研究グループが、健康な大人38人を2つの組に分けて調べました。一方は水素を含む水、もう一方は普通の水を、1日1.5リットル、4週間飲んでもらいました。体の中の酸化の程度を表す数値には、2つの組で差がありませんでした。30歳以上の人だけで比べると、体が酸化を防ぐ力を表す数値は、水素を含む水の組のほうが上がりました。また、血液の中の一部の細胞や、体の中のはれに関わる検査の項目にも、差が報告されています。ただ、参加者は38人、期間は4週間と短く、健康状態がよくなったかを調べた研究ではありません。
酸化についてわかっていること血液の中の悪玉コレステロールが酸化すると、血管の老化を進めることがわかっています。
水素の研究2014年、日本の研究で、34人を2つの組に分け、水素を多く含む水か普通の水を1回飲んでもらいました。30分後に、腕の血管の反応を表す検査の数値を比べると、水素を含む水の組で差が報告されています。ただ、1回飲んだ直後の変化を見たもので、健康状態がよくなるか、病気を防げるかを調べた研究ではありません。また、この研究には水素の商品を作る会社の研究者も加わっています。
酸化についてわかっていること活性酸素が増えすぎると、細胞の膜やたんぱく質、DNAが傷み、細胞がうまく働けなくなることがあります。こうしたことの積み重ねは、体の老化の原因のひとつと考えられています。肝臓や腎臓、脳など、どの臓器の細胞でも起こりうることです。
水素の研究動物の実験では、さまざまな臓器で、水素が活性酸素による傷みを抑えたという報告が多くあります。2015年には、細胞・動物・人を対象にした321本の研究をまとめた報告も出ています。ただ、研究の数が多いことは、人で効き目が確かめられたことを意味しません。また、人での研究は病気の方を対象にしたものが中心で、健康な人の内臓で同じことが起きるかは、まだ確かめられていません。
確かなこと・まだ研究途中のこと
- 体の中では、毎日「錆びのもと」が生まれている
- 錆びのもとは、増えすぎると細胞を傷める
- 体には「錆び止め」の仕組みがある
- 紫外線やたばこで、錆びのもとは増える
- 細胞や動物では、錆びを減らす結果が多い
- 人での研究は、数十人ほどの小さなものが中心
- どれくらいの量で、何が変わるかは、わかっていない
- 長く続けた場合の、大きな研究はまだない
まとめると、水素は「体の中の酸化に関わるかもしれない」として、健康や美容の分野で研究が進んでいる段階です。国の研究機関(医薬基盤・健康・栄養研究所)も、2016年に評価を出しています。水素水について「ヒトでの有効性について信頼できる十分なデータが見当たらない」としています。人で効き目があるという、信頼できる研究結果が十分にない、という意味です(国民生活センターの2016年の報告書による)。
錆びとうまく付き合うために
錆びのもとを増やしすぎないことは、水素に限らず、毎日の暮らしの中でできます。
- 日焼け止めや帽子で、紫外線を浴びすぎない
- たばこを吸わない
- 野菜や果物をとり、栄養のつり合いのよい食事をする
- よく眠り、体を休める
そのうえで水素を取り入れてみたい方は、次の章で紹介する3つの方法から、暮らしに合う形を選んでみてください。
水素を取り入れる3つの方法
水素の取り入れ方には、大きく3つの形があります。体への働きの違いではなく、時間・場所・手間の違いで選ぶのがおすすめです。
ミネラルなどを原料にした粒やカプセルを、水と一緒にとります。
時間や場所を選ばず、かばんに入れて持ち歩けます。機器もいらず、毎日の暮らしの中で手軽に続けやすい形です。
水素ガスを溶かした水を飲みます。容器入りのものと、家庭でつくる生成器があります。
飲み物として習慣にしたい方に向いています。水素は時間とともに抜けるので、開けたら早めに飲むのが基本です。
専用の機器でつくった水素ガスを、鼻から吸います。自宅に機器を置くか、サロンに通います。
家で決まった時間をとれる方に向いています。1回に数十分かかり、機器の安全の確かめも大切です。
3つの違いを費用や手間で比べたい方は、水素吸入・水素水・水素サプリの違いを比較|費用・時間・手間で選ぶ方法をご覧ください。
よくある質問
- Q水素で、病気は治りますか?
- A水素は、病気の治療の代わりになるものではありません。治療中の方は、始める前に主治医に相談し、その判断に従ってください。
- Q錆びのもと(活性酸素)は、なくしたほうがいいのですか?
- Aいいえ。錆びのもとには、菌を退治するなどの大切な役目もあります。大事なのは、なくすことではなく、増えすぎないように、錆び止めとのつり合いを保つことです。
- Qどれくらい続ければ、変化を感じられますか?
- A現時点では、どのくらい続ければ変化が現れるかを判断できる十分な研究はありません。
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この記事について
執筆:ウェルネス通信編集部
最終更新日:2026年10月27日
参考文献
- 国民生活センター「容器入り及び生成器で作る、飲む『水素水』」(2016年12月15日公表、2017年1月20日更新)(医薬基盤・健康・栄養研究所の情報の引用を含む)
- 長寿科学振興財団 健康長寿ネット「酸化ストレス」
- Ohsawa, I. et al. (2007). Hydrogen acts as a therapeutic antioxidant by selectively reducing cytotoxic oxygen radicals. Nature Medicine, 13(6), 688–694.
- Kato, S. et al. (2012). Hydrogen-rich electrolyzed warm water represses wrinkle formation against UVA ray together with type-I collagen production and oxidative-stress diminishment in fibroblasts and cell-injury prevention in keratinocytes. Journal of Photochemistry and Photobiology B, 106, 24–33.
- Sakai, T. et al. (2014). Consumption of water containing over 3.5 mg of dissolved hydrogen could improve vascular endothelial function. Vascular Health and Risk Management, 10, 591–597.
- Ichihara, M. et al. (2015). Beneficial biological effects and the underlying mechanisms of molecular hydrogen – comprehensive review of 321 original articles. Medical Gas Research, 5, 12.
- Sim, M. et al. (2020). Hydrogen-rich water reduces inflammatory responses and prevents apoptosis of peripheral blood cells in healthy adults: a randomized, double-blind, controlled trial. Scientific Reports, 10, 12130.
※本記事は健康情報の提供を目的としており、特定の疾患の診断・治療・予防を目的としたものではありません。研究結果は、実験の条件などによって異なる場合があります。体調に不安のある方は、医師・薬剤師へご相談ください。記事内の画像はイメージです。








